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かもめニュース

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2012年度〜2016年度

2013年度 Vol43

春近い ワオーの森で
うんとこさ、どっこいさ! 丸太を引き下ろす


みんなが大好き?な マムシ

 3月13日、くじら組とかめ組がワオーの森にやって来た。「くじら」と「かめ」が力を合わせて、シイタケのホダ木にする木を麓の小屋まで引っ張り下ろすのだ。
 年長では、元気者の喜一が風邪をひいておやすみだって。残念がってるだろうなぁ。
 前々日の大雪で木々の枝にはコンモリ雪が載っていて、暖かい陽の光に煌めいている。春が近づいてきた~と森が笑っている感じ。
 (今号の編修:高川オジさん。参考資料:樋詰、夏井の保育日誌。写真:遠藤お父さん)

「蛇、いる?」「蛇、見せて!」
 ワオーの森に着くなり、子どもたちが必ず発する言葉である。小屋にはマムシの標本があって、子どもたちには大人気。それを見てからでなければ、何事も始まらない。
 みんなで、押し合いへし合い見つめる。
 出発前に、いつものように山遊びで用心をすることを話し合う。
 「今日は クマ いるかな~?」と問いかけると、「冬眠している!」と返ってくる。
「そうだね。雪が溶けるころまで穴の中で眠っているから、今日は大丈夫だと思うけど… 」


もう、ふくらんでる。早く咲くと良いね

 上り始めて、冬芽の話をしようと木の周りに立ち止まってもらう。
 咲良と雄元が「サクラの木だよ」、「ヤマザクラ。もう、芽があるんだよ」、「春の準備をしているんだ」などと口々に言う。小先生たち、なかなか詳しい。
 「木の芽をよく見ると、丸い芽と、細い芽があるね。プクッとふくらんでいる丸い方が花になる芽で、細いのが葉っぱになるんだよ」と説明すると、ジーッと枝を見つめ、「アッ、これはふくらんでいる」「こっちはとんがっている」と微妙な違いを見分けていた。
 雪の上には、行き来した色々な動物の足跡が残っているけど、何の足跡か高川オジさんもよく分からない。今度、チャンと調べておこう。
雪が深い結構きつい斜面を、みんな平気な顔で上る。


クスサンの繭(まゆ) 中にさなぎの抜け殻が

 不思議なモノが木の枝先にくっついていた。糸を網目状により合わせたような楕円形。クスサン(樟蚕)という蛾の繭(まゆ)で、その形からスカシダワラ(透かし俵)とも呼ばれる。

 斜面をかなり登ったところで、「さぁ、この木を伐るよ」とみんなに告げると、年長の何人かが「ミズナラ」「ミズナラ」と言う。エ? 木の名前まで知ってるの! と ビックリ。
 後で聞いたら、前日、樋詰が「明日、シイタケのホダ木作りに行くよ」と言ったら、すかさず「ミズナラを伐るんだ」と反応したという。去年、たった一度教わった樹種名を忘れないでいるとは… 。聞いたことを片っ端から忘れてしまうオジさんとしては何とも羨ましい学習能力&記憶力だ。


オジさん、うまく倒せるかな~

 さて、子どもたちも保育士も「安全圏」に待避してもらってミズナラの伐倒に取りかかる。
いつもより安全と確実さを意識して(ギャラリーも意識して)慎重に2本のミズナラを伐り倒した。
 大きなミズナラの木が、「バキッ」という音がして、ゆっくり傾き始める。雪の上に「ドサッ」と倒れると、子どもたちから「オーッ」という歓声が上がる。


こうやって持つ。怪我しないように

 子どもたちが、枝払いをするために倒れた木に寄ってきた。まず、樋詰がノコ切りの取り扱いについて心得を説明する。子どもたちはチャーンと聞いている。(実際、危なっかしい使い方をする子はいなかったなぁ)。


「ウン、それでいい」と、幸来コーチ

 それから、それぞれ枝払いをする場所へ散っていったが、あちこちで、年長が初めてノコを手にする「かめ」に使い方の手ほどきを始めた!
 年長のたくましくも涙ぐましい、チョット感動の光景だ。「刃を出したまま歩いたらダメ!」、「これ、切ってごらん。ウン、じょうず、じょうず」。
 1年前からノコを使ってきた年長の腕の見せ所だ。
 幸来が彩夢に「おいで、教えてあげる」
 咲良も「睦チャン、おいで~!」


大物に挑戦。遂にやりきる

 絆里は、もう太い枝を切るのに真剣。側で桂史が「ネェ、絆里、教えてッ!」とアピール。やがて、桂史も絆里を真似て、太い木に取り組み始めた。「すごいね!」と声をかけても手を休めない真剣さ。
 実花菜は「春翔、その切り方、危ないって!」とアドバイスしながら、やがて、自らも太い枝に挑戦する。春翔は太い木に悪戦苦闘するが、ようやく切り終えて、「ヤッターッ!」と、万歳を叫ぶ。
 雄元は翔太郎を連れて適当な枝を探す。その翔太郎、切り始めると、「木って、固いなぁ。木も頑張ってる」と木の気持ちになっている。
 彩夢も睦も枝を足で押さえるという技を覚えて切っていく。
 龍毅は「見て、見て!」と自分が切った枝を誇らしげに掲げてみせる。
 細い枝を幾つも幾つも切っていく子、自分の腕や脚ほどもある枝にジックリ立ち向かう子など様々だ。


さあ、こっちへ引っ張るよ

 枝払いを終って、次は丸太にした太い幹を小屋まで引き下ろす。 これは年長の役割だ。
みんなで「せーの!」と息 を合わせ、「うんとこさ!どっこいさ!」「ふざけないで!」「チャンと引っ張って!」と声を掛け合い、力を合わせる。足を滑らしたり、雪に埋もれたり、転げたりしながら、何とか下まで引きずり下ろす。
 「疲れた~」という声が上がる一方で、「まだ、やりた~い!」というリクエストが多く、2本目に挑戦、そして、結局は3本も下ろしてしまった。


かめ組が運び下ろした薪材

 かめ組には、払った枝のうち太めのものを薪用に適当な長さに切って下ろしてもらった。たくさん抱えて、担いで、こちらも3往復した。
 雄元が「アー、疲れた。もうダメだ。でも、おもしろかった~!」と漏らした言葉がみんなの共通した気持ちだったかな。
 高川オジさんも、ヘルメットを脱いで頭の汗を拭き、気持ちよく涼んでいた。そこへ咲良が来て、「アー、丸っぱげ~!」とオジさんの頭を指さし、大声で叫んだ (>_<)  そんなことでめげてはいられない。一人ポツネンとしている大晴のところへ行って、「イヤ~、疲れたな。大晴も疲れたベ~」とねぎらったら、返ってきた言葉が「イヤ、年寄りでないから、疲れない」だって。  老いを意識させるダブルパンチにしょげた... ってか。いや、"まだまだ、おまえらに負けないぞ"と、平然としている高川オジさんだった。 (以前、喜一にうっかり「おまえは... 」と言ったら「今、喜一のこと、『おまえ』って言ったな」とクレームを付けられたことがあり、以来、「おまえ」を禁句にしていたのに、つい、「おまえら」なんて書いちゃって... 。平然ではなく、ちょっと動揺してるな)  かもめに戻っての昼食を年長と一緒に食べさせてもらった。「くじら」と「かめ」が同じテーブルに就いていることに気が付いたが、なんの違和感もない。卒園式までの短い時間、こうして年長と一緒にいることで、「かめ」の年長への自覚が育てられていくのか... と感じ入った。