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かもめニュース

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2002年度〜2006年度

2004年度 Vol39

このごろ、すっかり”かもめ番記者”になったつもりの高川オジさん。調子に乗ってのルポです

年長さん ソバを打つ

 2月28日、今日はソバを打って食べる日です。
 去年、年長は「にいぼり畑」でソバを栽培しました。種を播いて、みんなで刈り取り、エッサ、エッサと運びました。園庭の垣根にかけて乾かし、よく乾いたソバをブルーシートの上にバンバン叩きつけて実を落としました。次は粉にする番です。「石臼はありませんか」とあちこち尋ね歩きましたが、今時、そんなものは誰も持っていません。それじゃ、と思って頼み込んだ製粉所からは「そんな少しでは…」と断られ、もうお先真っ暗。みんなの苦労も無駄になっちゃうかな、と思いかけていたら、「灯台もと暗し」で、かもめOBの尾崎さんが「ありますよ」と言って貸してくれました。

タイムスリップ

 この日のかもめホールは、製粉所兼製麺所。石臼や篩(ふるい)、のし棒などがずらりと並び、頭をバンダナでキリッと包み、前掛け姿もりりしい小さな「職人」さんたちが立ち働きます。
 玄ソバから茎や石のような異物を取り去ることから作業を始じめ、粉ひきに移ります。グルグル、ゴリゴリと子どもたちが順番に石臼を回すと、出てくる出てくる、上と下の臼の間から白い粉が少しずつ出てきます。次々に登園してくるお母さんたちが「何、これ?」とか「スゴイ、スゴイ。昔あったよね」と驚いたり感動したり。昔に返ったみたいな懐かしい気分になっているところへ、少し遅れてやってきた渡会母さんが「ウワァー。縄文時代みたい」
 時代は一気に遡りました。
 汐花(4歳児)に「やってみるかい?」と誘うと、チョッと尻込みし、それでも、恐る恐る石臼に手を触れます。ソレッ、頑張れ! でも、石臼ではなく、体の方が回っている。”汐香、違う、違う。こうやって回すんだよ”と手ほどきすると、すぐ要領を呑みこんで、りっぱな”粉ひき娘”になりました。
 次は、「ふるい」にかけてソバ殻と粉とを分離する工程ですが、子どもにはなかなか難しい。ふるいは少しも動かず、体だけが大揺れ。横にふるえず上下に振っちゃう。せっかくふるい落とした粉の上にソバ殻を降り掛けて、またやり直し。何とか終わりましたが、出来た粉はあまりにも少なくて哀しい気持ちです。殻は剥(む)けてもソバの実がうまく潰れず粉にならないのです。「私がやってみる」と小島が臼を回すと、アラ不思議、吹き出すように粉がこぼれ出てきます。小島のすごい怪力、見せかけだけの人ではなかったんです。

いざソバ打ち

 いよいよソバ打ち。「これから、ソバ打ち名人に教えてもらっておソバをつくります。ずっと、ずっと遠い名寄というところから来てくれた山本さん。小島のお父さんとお母さんですよ。」と紹介された名人ご夫妻が指導してくれます。
ソバ打ちには、水回し、練り、延ばし、切り、ゆで、という作業の流れがあります。 まず、鉢が用意されます。名人の木鉢は、樹齢250年、木目も美しい20kgもあるというとてつもなく大きい鉢です。子どもたちには金属のボールで我慢してもらいますが、颯太郎だけは、池内父さん愛用の朱塗りの見事な鉢で差をつけます。
 水回しでは、鉢にいれたソバ粉に水を混ぜ合わせます。お父さんの指導が良いのか、もともと手筋がいいのか、颯太郎の手つきが鮮やかです。一斉に「颯太郎、スゴイ、スゴイ!」という賛嘆の声。やや間があって、今度は「ウワー!」という悲鳴。みんな見ちゃったんです。褒められて笑い崩れるような颯太郎の、ほころんだ口元からヨダレがタラーッと鉢の中へ落ちたのを。
 水回しが終わった粉をかたまりにまとめ練り込む「練り」は、結構な力仕事です。みんな真剣に粉にまみれた白い手で、ものも言わずに練ります。静かになったホールに突然響く「だめー!」という切迫した声。滉也の指先に鼻の穴から引き出した塊(かたまり)が…。滉也はそのまま作業を続けようとしていたのです!

 別に隠し味を仕込もうとしたわけでなく、真剣さのあまり指先に気が回らなかっただけ。滉也は走って手洗いにいきました。
 改めて見てみると、和希の鼻から垂れ下がっているのもチョッと気になります。相当に味が濃そうだよ。
次は、手と麺棒(めんぼう)を使っての「延ばし」です。厚さが均一にならないし、形も円や四角にならず、名人の指導が一番必要なところです。「めいじーん!チョッと来て!」と呼びつけたり、すっかり気安くなっています。馴れ馴れしすぎる呼びかけを気にする風もなく、名人は優しく丁寧に教えてくれます。
 子どもたちが関わる最後の工程は、「切り」です。のばした生地に打ち粉を振ってたたみ、こま板(定規のようなもの)を載せ包丁を添わせて細く切っていきます。子どもたちはそれなりに要領を呑みこんで、それなりの麺の出来上がり。
 みんな、ホントによくやりました。

蕎麦処かもめ庵

 大人がゆでてくれたソバがお椀に盛られ、天ぷらのトッピング―天ぷらソバがテーブルに並び「蕎麦処かもめ庵」の開店です。
“店長”が「みんな、力を合わせて、畑でイモやダイコンを作ったね。ソバも作って楽しかったね。そのソバが美味しそうなおソバになってテーブルの上にあります。みんなのソバに、おめでとー」と子どもたちの頑張りをねぎらって、さぁ、いただきまーす。
 子どもたちは「お代わりー」の連発。とても満足そう。大人は「ソバ団子に近いね。イヤ、”ソバ練り”かな」とささやき交わし、子どもたちの打ったソバと名人が別に用意してくれたツルンとした喉ごしのソバ、ワイルドと洗練の両方の食感を楽しみました。
 山本夫人が「子どもたちのキラキラ輝く目を見ていると、涙が出そうで。可愛いいですね…」と言います。時々は、”うるさいナァーこいつら。もう、あっち行けー”と思う高川オジさんですが、この日は「ホントにそうですね」と大いに同感するのでした。

私たちも絶対やる!【張り切る かめ組の母さんたち】

「自分たちでソバを作って食べるなんて物語の世界だね」と安田母さん。
「またソバの種持ってくる。かめ組も絶対やろう」と山内母さん。
一方、収穫や乾燥に散々苦労した羽崎や樋詰は「もういい」と素っ気ない。高川オジさんも「バイトに忙しくて…」とか、断る口実を考えている。果たしてどうなりますか。