2012年度 Vol18
年長の課題「縄編み」に取り組む子どもたち
くじら組の子どもたちは年長になるまでは、一年を通して終日、外遊び中心の生活をしてきました。ままごと、鬼ごっこ、かくれんぼ、草編み、木の実とりなど遊びがいっぱいです。夏は海に浸かりっぱなし、冬はソリ遊びで雪まみれ、暑さも寒さもヘッチャラ。
このような遊びを通じて心と体を逞しく鍛え、子どもたちは年長組になります。
年長になると生活の内容が一変します。鍛えられた知力と体力を使い、座ってする作業が取り入れられます。雑巾縫い、七夕の天の川つくりを経て、8月から縄編みにかかりました。
集中力と意欲を培う
縄編みは、年長が取り組む課題の中では最も難しいものです。編み方の手順・方法を聞き、動作を見て模倣することから始めます。一本の縄を編み上げるためには、手や足の力、背筋・腹筋を総動員しなければなりませんが、精神面での集中力・根気、そして、なによりも意欲が要求されます。
いよいよ始まります。
まず、6色の布を用意し、その中からそれぞれ好きな色2色を決めます。次に、お気に入りの色の布を縦に裂いて細長い布をつくり、そこから、同色2本、異なる他の色1本(仲間はずれ布)を選び取って縄の素材とするのです。
布が破れる音と 子どもの歓声と
最初の難問は、一枚の布(3.3m × 0.9m)を6等分して裂く方法です。
「さあ、どうやって分けたらいいのかな?」と問いかけて、子どもたちに考えさせます。子どもたちは毎年違った分け方を見つけるのでそれが楽しみでもあります。
愉知郎、和弥、桧、壮一郎と一人ずつ前に出て、それぞれの考えを述べますが、均等に裂くという方法に行き着けません。いきなり6等分はさすがに難しい。そこで、あらかじめ半裁してある布地を取りだして、「これを3つに分けよう。どうしたらいいかな?」
和弥が畳むことに気付きました。でも、等分になっていません。続いて登場した桧は見事に3等分に折り畳みました。布の端の3等分の折り目のところにハサミを入れ、切れ目を作ります。いよいよ、「布裂き」。二人が切れ目の一方ずつをつかみ、引っ張り合って裂きます。
布を裂くなんて初めての体験。みんな、”ホントに裂けるのかな?” と疑心暗鬼の様子です。信じられない面持ちで引っ張ってみると、「ワー、ホントに破れた!」と、歓声が上がりました。布が裂ける音を楽しむように、喜々として裂いていきます。裂き終わると、銘々に好きな色を決め、それを丸めて「布だんご」にしてから編み始めます。
ここまでは、みんなで知恵を出し合い、揃ってスタートラインにつきました。
問われる模倣力
「ここはね こうやって、こうやって…」
「アー、そうか」と教え合う
まず、三つ編みを実演して見せます。これを見て、自分で編んでいくのです。
同色の布を交差させるときどちらが先になるか、「仲間はずれ布」をどう編み込むのか、編み上がりまでじっくり見させてから始めました。
「分かった」と言って布を手にしますが、なかなか簡単には編めません。苦労しながらも何とか自分で編み上げようと縄と格闘する子、先に進めず途方に暮れている子、悔しさに涙を見せる子、疲れ果てて「船漕ぎ」が始まる子、さまざまです。
午前中、作業は2時間40分も続きました。それなのに、「もう、ごはんだよ~」と声をかけると、「まだ、やる!」と…。ビックリさせられます。そして、智太と彩世は食事もそこそこに縄編みに戻ります。
昼寝の後も「編みたい!」という要求が何人もの子どもたちから出され、おやつを食べ終わった子から縄編みに戻っていきます。2時40分~4時40分、ほとんどの子が縄と格闘していました。
昇己は、イイところまで行くのですが、どこかで編み込み方を間違ったようで、ほどけて進まなくなりました。途方に暮れた昇己の口から、「(七夕の)短冊に、縄編みができますように、って書けば良かった」と切ない言葉が漏れます。
「智太、できたー!」と声が上がります。その顔には達成感が満ち溢れています。おめでとう、智太はお喋りをせず頑張ったから真っ先にできたんだね。「出来上がるまで帰らない」と、意気込んだ彩世が、これ以上はきつくできないというようなしっかりした編み上がりで完成。顔には満足感浮かび、体から力を抜いてホッとしています。
亮佑は智太のそばに行って、編み方を学んでは挑戦を続けます。挑戦する姿はみんな同じ、ひたむきな子どもたちを抱きしめたいという思いが…。
(記:高川)