2013年度 Vol31
(今号は高川オジさんが編集しましたヨ)
紅葉の「ワオーの森」に子どもたちの歓声
「ワオーの森」は秋の装い
9月に熊が出現したので見合わせていた「ワオーの森」。それからたびたびパトロールをして、出没した痕跡のないことが確認できたし、紅葉も真っ盛りだし…ということで、ようやく行くことになった。
入山前に、何はさておいてもヒグマの習性や、万が一、出会ったときに取るべき行動、取ってはいけない行動などを知って欲しいと思い、話し始めると、年長は、
「知ってるー!」
「走って逃げたらダメなんだ」
などと言う。
以前に話したヒグマに対する心得をチャンと覚えている。ウーン、頼もしい。
樋詰と夏井とマサルで、「先ず、大人がしっかり対応しようね」と確認し合って、サァ、出発。
「これ、何という木か知ってる?」
「サクラー。春に花が咲いていたからわかる」
「オー、よく知ってるな~。これはエゾヤマザクラという木。で、(傍らの、明 咲良(さくら)を指して)、この人はミョウ サクラ…」
洒落を言ったつもりが、”だから、何…?”という顔、顔… (-_-;)
気を取り直して、
「春に来たときと今、どっか違うね~?」
航青「花がない」
実花菜「葉っぱの色が違う」
と、反応が早い。
「そうだね。もう、葉がスッカリ落ちてしまった枝もあるよ。でもね、葉が落ちたあとに…」
「もう、芽が出てるんだよ!」と、すかさず咲良が引き取る。(ヨッ、咲良先生!)
「そうなんだよ。来年に備えて、もう小さな芽が育っているんだ。葉が落ちるのは、葉っぱが歳を取るからなんだね。人間の髪の毛も同じさ。ほら、オジさんの髪の毛も白くなって、抜けちゃってる…。」
またもや、キョトーン。
(子どもたちに禿げや抜け毛の悲哀が分かるわけないよな。面白くもない冗談はヤメヨーッと)
生き延びるために…、植物の「智恵」
秋は草木にとっては結実の季(とき)。実や種を見つけて、そこに仕組まれた命をつなぐ知恵を知って貰おうと思ったけど、ほとんど落ちたり飛んで行っちゃったり。
でも、オオウバユリだけはあちこちに見えた。
「あれはオオウバユリっていうんだけど…」と語り始めたら、2~3人の子が立ち枯れているオオウバユリのところに駆け寄り、盛大に揺らし始めた。白っぽい種が吹き上がるように飛び出した。
驚かせようとした「演(だ)し物」を先取りされて、オジさんとしてはいささか調子が狂うのだが、一方で”よく知ってるなぁ”と感心する。
オオウバユリは、種から芽を出し、毎年、葉を少しずつ増やし、5~7枚になったところで茎を立ち上げて花を咲かせる。普通は10数年ほどもかけてやっと花を咲かせ実をならせて、その一生を終わる。一つの茎に多い場合は20個を超える実を付け、それぞれの実に5~600粒くらいの種を内包する。だから、一本のオオウバユリは1万粒を超える種をつくることもある。
それが風に揺られるたびに宙を舞って飛び、広い範囲に着床するのだが、めでたく芽吹いて更に10数年後花を咲かせる確率は1万粒にひとつ…ということかな。壮大な「保険」をかけているわけだ。オオウバユリは生き延びるために、このほかにもいくつか保険をかけているが、「かもめニュース」は植物学を講じるところではないので、子どもたちに話を戻して…。
イタヤカエデの翼果(よっか)が少しだけ木に残っていた。翼の生えたような形状のそれを手に取り、
「この中にも種が入っているんだよ。変った形だね」と言うと、
「ヘリコプターみたいに遠くへ飛んで行くんだよ」と、間髪入れずに反応がある。
みんな、よく知ってるなぁ。年長には先生が一杯いる! という発見。
咲良が寄ってきて、ニヤニヤしながら高川オジさんの体に触るので、何をやってるのかと見れば、「ひっつき虫」をくっつけている。これは何という草のものか分からないが、種の先端が鉤(かぎ)状に曲がって動物の体や人間の衣服にくっついて種を遠くへ運ばせる種子散布の一つの方法。そのことを教えてあげようと思ったが、「くっつけてやったぞー!」と満足したか、とっとと行ってしまった。
雨上がりの遊歩道に、鹿の大きめの足跡がクッキリと残っている。先行する子どもが、「鹿の足跡だって!」
「踏むんじゃないよ。後ろの人も見てごらん」と、少し興奮気味。
「ワオーの森」最上部の遊び場に着く。
思いっ切り遊ぶ子どもたち
この遊び場は、歴代の親たちが手作りしたフィールドアスレチックという趣になっている。
子どもたちは、てんでに「お気に入り」に駆け寄って遊び始める。
翔太郎が必ず挑戦するのは斜面の下向きに倒れたニセアカシヤの木、「倒木渡り」だ。根元の方から先端方向へジリジリと渡っていく。進むにつれて斜面との高度差が大きくなっていく。一度目は高川オジさんに助けてもらったが、二度目からは自力で挑戦、三度目に完璧に成功!
桂史は粘り強い性格そのままに、落ちそうになりながらも何度も挑戦。
絆里は「ファイト~、いっぱーつ!」 みたいにロープに飛びついたが、敢えなく失敗。その勇気、スゴイけど慎重さも、ネ。
高い木の枝からロープを一本垂らし、末端に板きれを水平に取り付けただけのブランコも人気のアイテム。
みんな、ヒョイと飛び乗る。これって、なかなか微妙なタイミングと体勢が要求されるんだけど、上手い! 次々とマスターしていく。
ブランコ一つに、やりたい子どもがたくさん。当然、順番争いになるのだが、いっとき言い合いをしたらチャンと列に並んで、仲間のパフォーマンスに声援を送っている。これって、見ていて相当感動的なシーンだ。
千帆は空中高く舞い上がり、「イェーィ!」なんて片手を上げる。なんだかサーカスのブランコ乗りみたい。
雄元は、最初、振れ幅が大きくなるのを怖がって「押さないで、押さないで!」とビビっていたが、すぐにリラックスして空中遊泳を楽しむようになり、その面白さに取りつかれたように何度も順番待ちの列に並ぶ。「倒木渡り」のときもそうだったけど、「おっかなびっくり」から「自信に満ちて」まで少し時間がかかるけど着実に能力を発揮していくんだな。
これまで、かめ組の女の子は「集団ハンモック」やブランコで遊んでいたが、今回は少し様子が違う。ツリーハウスから地面まで垂らしている4メートルに近いロープを次々と登ったり降りたりしている。年長の千帆たちが登り降りしているのに刺激され、最初に挑戦したのは春翔。それを見て、ブランコにいた睦、彩夢もロープに取りついた。
睦は途中で止まってしまい、どうなるかとハラハラさせてくれたが、ついに最後まで登り切った。
彩夢は途中で力尽きて降りた…と思ったら、ジャンパーを脱いで再挑戦、ついに上までたどり着いた。
桂史もやってきてチャレンジする。それを成功体験がある3人が見ていて、どうやったら登り切れるか解説者のように話している。そして、声援が始まる。「もう少しだ!」「反対を向きな!」「頭がぶつかるよ。こっち、こっち!」
そんな光景を見ていて、子どもたちのやりきる力、来るたびに変わっていく姿に驚きと感動を覚える夏井。
季節は巡ったけど、山は雪を積もらせて、また、楽しい遊びを用意して待っていてくれるぞ~!
後日談
① 動物園へ行ったとき。
クマを見ながらの、桂史と翔太郎の会話
「クマが来たら、走って逃げたらダメなんだよ な。マサルさんが言ってたな」
「そうだ。ゆっくり行くんだ。リュックも置いていくんだよな」
② 山登りのとき。
「ア、これはホオの葉だ」
「これはカエデだ」
「この木、何で曲がってるんだろう?」
(子どもたち、「ワオーの森」で体験したことをチャンと身につけている!)
ワオーの森」 そもそものお話し
それは、2003年、我が子を冒険好きのトムソーヤのように遊ばせたいという親の願いから始まった。「ツリーハウスをつくろう!」という呼びかけに、当時の親と職員は資金と労力両面で積極的に応じた。
一口2000円のカンパ呼びかけに8万円も出してくれたお母さんがいた。(へそくり?からかな)
父親に2人の建設のプロがいて、「任せろ!」と先頭に立ってくれた。資材の担ぎ上げには、肉体労働と縁のない親もフラフラしながら協力。子どもたちも「猫の手」以上に貢献した。
遊び場のアイテム?は全て親たちと高川オジさんのオリジナルで、名称はかなりいい加減。それぞれの主役はロープで、ロープの扱いにたけた漁家出身の親とフェリー乗員の親がいてくれてこその傑作である。
ツリーハウス
もろもろの事情から上物(うわもの)を立ち上げるまでには至らず床部分で終わって、実態は「展望デッキ」というところだが、一丁前にツリーハウスと呼ばれている。
集団ハンモック・トランポリン
前述の漁家出身のOB親が提供してくれた漁網でつくった。小さい子どもたちにとっては「登竜門」。
ロープ渡り
2本の大木の上下2段にロープを張って綱渡りをする(ロープは水平に張ってあるが、斜面にあるので進むに従い高度が増し、当然、緊張感も増す)
ブランコ
10センチ × 40センチの板の真ん中に穴を空け、そこに木の枝から下ろした1本のロープを通して止めただけのもの。当初、「ターザンロープ」といっていたが、ターザンが死語なのか、この頃は単にブランコになった。最も簡易にして最も人気がある。
倒木渡り
斜面の下向きに倒れたニセアカシヤの木を根元の方から先端方向へ渡っていく。進むにつれて斜面との高度差が増しチョット緊張する。
吊り橋
昨冬の大雪と怠慢な管理のため落ちてしまった。来春へ向け、従来よりワンランク上の楽しい吊り橋を…と考慮中。
実は、吊り橋ばかりか、ツリーハウス本体も崩壊寸前だったが、春に、浅野、佐原、和田、曽田の父さんが復旧・塗装をしてくれた。
各遊具の点検・ロープの張り直しなどが必要な時期に来ているので、前述のOB親にご協力をお願いすることにしている。
ツリーハウスについては、「かもめニュース」→「ツリーハウス通信」と進めば、建設経過を詳しく知ることができる。
高川とマサルの?な関係 (?_?)
かめ組とかに組が散歩の途中で高川宅前を通りかかったときのこと。夫婦二人が一緒にいるのを見て、「高川とマサルさんお友達なの?」(何と答えたんだったっけ…、しどろもどろ)
〜数日後、またやってきて〜
陽智「前から高川オジさんと友達だったの?」
桂史「どうして友達になったの?」
高川「…、好きだったからかな」
(マサル “ホントかよ~?” )
はるか「どこが好きなの?」
陽智「どっちが妹なの?」
高川「……」