2013年度 Vol38
高川の保育日誌
山小屋(春香小屋) 全焼 !
子どもたちの思いは…
「山小屋が火事だと聞きました! かもめの子どもたちは無事ですか?」
張碓小学校校長先生が心配して掛けてくださった電話で山小屋火災を知る。
正に、寝耳に水! 信じられない。暫く体の震えを止められない。
「山小屋生活」は14日で切り上げていた。今日まで続いていたとしたら……。
子どもたちに、その事実を伝えると、年長の子どもたちは「来年の年長はどうするの?」と一様に心配を口にする。自分たちにとって、この上なく楽しい場所だった山小屋。そんな山小屋を失ってこれからどうなるのだろう…後輩への気遣いなのだろう。
かに組(3歳児)が、火災を想像して絵を描く。
脳裏に浮かぶ思い出も描く。何枚も、何枚も思い出の数だけ。
「これ、いま山小屋が燃えているところ。消防車が来ている」
「火事になって屋根だけ残ってなくなっちゃった」
「これは焼けない前の小屋だよ。ストーブでしょ、机、階段、薪を入れてるところ。」
「おじさんたちが新しい小屋を建てている」
「どこから火が出たか消防のオジさんと警察のオジさんが調べてるよ。マッチが燃えたと思ったけど、ストーブかも知れないんだって」
「山小屋を作ってくれる人が来たの」
「かもめ」の歩みと共にあり 子どもたちの心に残る山小屋
山小屋は「かもめ保育」にとって色々な意味でかけがえのない場所であった。
「かもめ保育園」は発足までの「工程図」が狂い、園舎を確保できないままにスタートせざるを得なくなった。切羽詰まって、山小屋を借りて入園式と数日間の保育をおこなった。現在の「海かもめ」の借用に目処がつくまで、山小屋に頼っての際どい綱渡りだった。
子どもたちの心にも山小屋が大きな位置を占めている。在園の子どもたちばかりでなく、巣立っていった子どもたちにとっても。
躓(つまず)いたときなどに、小屋の「そりコース」を眺めたり、滑ったりして気持ちを取り直す子。
「お母さん、辛いことがあったら、森の中で葉っぱの匂いを嗅いだら良いよ」と親にアドバイスする子。
山小屋にまつわる、そんな話をよく聞く。
そり遊びに熱中する1年生になった子が、夕刻、同じ時間になると帰ってくる。時計も持っていないのに、なぜ?…と不思議に思った母親がたずねると、「そりのスピードが出てきたら、もう帰る時間だって、わかる」と言ったという。バランス感覚や足腰の強さばかりでなく、自然に対する勘のようなもの、それらは朝から晩まで雪山で遊ぶことで育まれたものだろう。
そのような、遊びの拠点だった山小屋が無くなってしまった。言いしれぬ無念さと喪失感に襲われている。
長い間、本当に長い間、利用させていただいた商大短大部山岳部OB会の皆様に言葉に尽くせぬ感謝を献げる。