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かもめニュース

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2017年度〜2021年度

2020年度 Vol2

雑巾縫いたい!

 年長になって初めての課題が雑巾縫いです。新年度を迎え、「年長さんになったね~どんなこと楽しみ?」と子どもたちに聞いてみました。「絵の具やりたい」「ちょうちん作りたい」「縄跳びしたい」「(新1年生の)日向みたいな大ゴマやりたい」…お~たくさんやりたいことが出てくるなぁ。「あ、雑巾!雑巾したいな」と雫が言うと、全員が「うんうん!やりたい!」「縫いたい!縫いたい!」と大賛成。タオルを渡すと、持った子からタオルを振り回し、喜びの舞!こんなに反応があるとは…!そして雑巾縫いがスタートしました。
 雑巾縫いの工程は、タオルをたたむ、糸の長さを計る(一尋…両手を広げた長さ)、針に糸を通す、玉止め、縫う。これを大人の話を聞いて自分の力で行います。指先の器用さ、目と手の合一、身体を支える足腰、そしてなによりも自分で作るんだという意欲。とにかくこの意欲が課題を行う中で最も大事になります。
とはいえ、そんなに簡単なことではありません。なかなか糸が通らず、「はいんないっ!」と天を仰ぐ絢斗、大人を呼んでいる賀久。他の子たちは黙々と…といった感じでした。何とか初日に全員糸が通り、縫い始めました。陽翔は縫い始めると、「はぁ~縫ってるおれ~!」と縫っている自分に酔いしれています。
始めの糸が短くなり、もう一回一尋計り、また糸を通す。そこに苦労した壮真。なかなか入らない、ということが続き、2日間気持ちが向かない日がありました。壮真もみんなと一緒に取り組めたらいいなと感じていた次の日、自ら準備を始め、その日のうちに外枠を縫い終えた壮真の姿に驚きました。やる気が出るとこんなに力を発揮するんだ!糸を通す、縫うことに苦労した雫。初日は家に帰ると雑巾縫いの話をしていたそうですが、2日目以降雑巾の話をしなくなったそうです。みんなが完成し始め、内心は焦っていたのかもしれません。でも雫は諦めることなく、気持ちを腐らせず、毎日黙々と雑巾と向き合っていました。あと少しで縫い終わる、というところで給食の時間になりました。「全部縫う!!」と雫の意志は固く、みんなが給食を食べていましたが目もくれず、ついに完成!!できた~~!!!賀久もなかなか糸が通らない、思うように縫えない…という思いをしました。
 雑巾が完成した時のその3人の喜びようは本当にこちらも嬉しくなるほど。小さいクラスの大人、給食さんにも見せに回りました。「本当に苦労して、やっとできた」という思いが爆発したのでしょうね。苦労して、苦労するからこその達成感。そして喜び。これから様々な課題を通して子どもたちに感じてほしいと思っています。
賀久は雑巾縫いのことや自分の思っていることを家でも話していたそうです。そのやり取りをお母さんがまとめてくれましたのでご紹介します。

賀久の雑巾奮闘記  (佐々木賀久母より)

 4月からいよいよくじら組になりました。昨日まではなんだか実感が無い様子。それが1日に帰宅した時は別人の顔。年長モードにロックオン!!興奮状態の賀久になっていました。すぐに「雑巾縫いたい!!縫いたい!縫たーーい!」としつこめに要求されましたが、くじらみんなでやってみてごらん。と納得。
 2日目からは帰ってくると様子が違い、「(かもめで雑巾を完成させた子が家でも縫ったという話を聞き)雑巾縫う!だって、友達も家でやってきたもん、賀久もやっていいでしょ?」と理論武装の構え。「みんなで1枚完成したら家で縫っていいんだよ。みんなで頑張ってるんだってね!」といろいろ言ってみるものの、ごまかされずに怒りはヒートアップ。「ちがう!そうじゃない!」「お母さんは賀久の気持ち分かりたくないってことなんだね!!」と泣きながら訴えて来ました。はぁ…。母唖然。こんなこと言うようになったのーという驚き。筋が通った主張に返す言葉が見つかりません。そして何より、強い意欲を感じました。
 それからの日々はたくさん苦労したようで、帰宅時に雑巾できた?と他意もなく聞く父には「明日絶対完成させる!!」と言ってみたり「今日も雑巾かー。」と答えていましたが、母とは日々揺れる胸の内を話していました。
賀「雑巾難しいんだよー。針も難しいんだー。」
母「そっかー。難しいのにやりたいってがんばるの、すごいね!」
賀「早くできなくていいの?」
母「お母さんは難しいことやるのにもすごく時間がかかるんだ。だから毎日少しずつでも頑張ってやることにしてるよ。賀久は毎日頑張っているからきっと完成できるよ。早くなくても大丈夫。」
賀「明日もやるぞー!!」
次の日…
賀「雑巾頑張ったけど、今日できなかったなあー。お母さん、勝ち負けはいいの?」
母「うん。お母さんは勝ち負けより一つのことを諦めないで頑張ったりすることがカッコいいと思うなー。」
賀「賀久、カッコいい年長さんになる!!大変だけど、おかあさんのためにつくってやるか!」
母「楽しみすぎるーー!」賀、母 抱擁。

私の回答があっているか分からないけれど、思いのまま答えました。小6の長男と話しているような不思議な感覚で、精神的な成長を感じました。
当たり前なんでしょうが、心を持った「人間」になったんだな…と。
自分の手の遅さを理解できる客観性や、やりたいけどできない!意欲と我慢のジレンマ。自分の気持ちを理解してほしい。様々な葛藤の中に成長が見えました。
 成功しても、失敗しても大丈夫!!その過程にある楽しくも苦しい経験をさせてもらったおかげで次に生かせる気がしています。

いつも子供たちの成長を見守っていただき、本当にありがとうございます。これからもよろしくお願いします。