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かもめニュース

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2002年度〜2006年度

2004年度 Vol30

お話の世界を描く子どもたち

 年長の子どもたちは、本を読んでもらうのを朝から待ちわびている。具合の悪い滉也も、「本を読んでから病院へ行く」と青い顔をして登園してきた。
 『ふき』(斉藤隆介作・滝平二郎絵)を読んだ。
 でんでろ山の青鬼が山を荒らしにやってくる。ふきの父さんが立ち向かったがやられてしまう。ふきは、お父のかたきうちに挑むが、なだれが起きて青鬼とともに…。
 悲しい物語に手をにぎりしめ、目をうるませて、身じろぎもしないで聞き入る子どもたち。読み終わると、幾度となくページをめくりなおしては怒りを燃やしているよう。

 今度は、その思いを絵に描きたくなり、何枚も何枚も描く。 温は、お話しの初めから終わりまで流れを追って16枚もの絵を描き上げ、精一杯の言葉で思いを語る。 みんな、他の子が話しているのを待ちきれない様子で「聞いて、聞いて」と割り込んでくる。この本によっぽど魅せられたらしい。

 年長に交じってお話し聞いていた、卒園児の大輝も真剣な面持ちで描いている。素晴らしい絵に仕上がった。大輝の絵を見た子どもたちは口々に、「すごい!」とビックリ。すっかり刺激された子どもたちは、また描き始める。さっきまで描いていた絵とは全然違う。

 2時間も描き続け、昼時になってもやめようとしない。「ご飯だよ」と声をかけても、
「ご飯食べなくてもいい。ずっと描いていたい」
「手に汗をかいているけど、やめられない」
「描きたいものがいっぱい出てきて、困っちゃう」
 子どもたちの成長を時間を短縮して見るような、この時期の年長ならではの姿を目の当たりにして、保育という仕事の底知れない魅力に浸るときだ。

(高川 記)